【小説】Lv8 呪いの装備を最強の防具に | 先生、冒険の続きを。~31年目のサンスーファンタジー~|第1章 冒険への誘い 編
【ここまでのお話】
Lv8 呪いの装備を最強の防具に
骨折してギプスで
ガチガチに固められた右腕は、
本当に、本当に不自由だった。
10歳の少年が送るギプス生活は、
想像以上の苦行だ。
特に、毎日の
『お風呂』の時間が最悪だった。
ギプスを絶対に
濡らしてはいけない
そのため、
お風呂に入る前にはいつも、
右腕をビニール袋で二重に
ぐるぐる巻きに包み、
輪ゴムで厳重に縛る。
当然、湯船に腕を入れることなんてできない。
湯気で中が蒸れて、
じわじわと痒くなってくるのも堪え難かった。
不自由極まりない右腕の白い塊を見るたびに、
僕は、激しい後悔に襲われていた。
「なんで、あんなところで
転んじゃったんだろう……」
「普段の生活から、
もっと怪我に気を付けないとダメだ」
真っ白で無機質なギプスは、
僕のだらしなさを責め立てる
最大の戒め(いましめ)
であり、
自由を奪う
『呪いの装備』
そのものだった。
数日後ーーーーー
学校へ登校した僕は、
この不自由な体のことを
先生に伝えに行こうと思い立った。
職員室の先生の元へ歩き、
自分の体よりも大きく見える、
大げさな白いギプスを
突き出すようにして見せた。
「これ、すごく不自由なんだ」
勇者なら何とかしてくれるかもしれない。
その想いが通じたのか?
僕のギプスを見た瞬間、
レベル99の勇者の目がキラリと光った。
先生はニヤリと不敵に笑うと、
こう言った。
「ユーチ、腕を出して!!」
何をするんだろう?
不思議に思う僕の目の前で、
先生は机の引き出しから1本の
黒い油性ペンを取り出した。
ポンッ!!
そして、キャップを外すなり、
僕の真っ白なギプスに向かって
迷いなくペン先を走らせた。
スラッ、スラッ!
サッ、サッ!!
「えっ!? 先生、何をするんだ!?」
驚いて声をあげる僕を無視して、
先生の手は魔法のように動き続ける。
キュッ、
キュッ、
という
小気味いい音が、
静かな空間に響く。
無機質だった白いキャンバスの上に、
見る見るうちに力強い黒い線が刻まれていく。
「何だこれは……」
描き終えた先生が、
満足そうにペンを置いた。
そこには、
あの「魔法の絵」が描かれていた。
それは、
先生が実際に家で飼っているという、
グリーンイグアナの
『レイザー』の絵だった。
長いしっぽ、
リアルな鱗、
そして今にも動き出しそうなほど
鋭く、優しい瞳。
ギプスを丸ごと包み込むように描かれた
イグアナのレイザーは、
まるで僕の怪我した腕を全霊で
守ってくれている『守護獣』のようだった。

「……すごく、カッコいい!!」
さっきまでのブルーな気持ちが
一瞬で吹き飛び、胸の奥から
ドクドクと熱いワクワクが
湧き上がってくるのが分かった。
今まで、目に入るたびに
『後悔』と『反省』を
突きつけてきた忌まわしい右腕のギプス。
それが、先生のペン先から
放たれた魔法によって、
見るたびに心が躍る
『世界にひとつだけの魔法のギプス』へ
と生まれ変わったんだ。
大人はよく、
子どもが失敗すると
「反省しなさい」と責める。
だけど、先生は違った。
不器用で、
怪我ばかりして、
落ち込んでいる少年時代の僕の
『戒めの呪い』
を 先生は、
たった1本の油性ペンと、
圧倒的な、子性の魔法で、
優しく解いてくれたんだ。
僕の呪いの装備が、
最強の防具に変わった。
その防具を誇らしげに掲げながら、
教室へと走った。
もう、右腕の重みなんて、
1ミリも感じなかった。
ユーチの骨折が回復した!
Lv8:呪いの装備を最強の防具に 完 / Lv9へ続く
