F1モナコGP 追い抜き不足でもコース変更せず 主催者が明言
F1モナコGPの主催者が、追い抜きの少なさを巡る批判が続くモンテカルロ市街地コースについて、今後もレイアウトを変更する考えがないことを明らかにした。モナコ自動車クラブ(ACM)のミシェル・ボエリ会長は、フランス紙『Nice-Matin』のインタビューで、コース変更にはFIAによる新たな公認が必要になると説明した。
モナコGPはF1カレンダーで最も伝統あるレースのひとつだが、現代のF1マシンでは追い抜きが極めて難しく、レース展開の単調さが繰り返し問題視されてきた。それでもボエリ会長は、コースそのものを変更する考えはないと断言。一方で、リバティ・メディアとの関係や施設改善についても語り、モナコGPがF1にとって重要な存在であり続けることに自信を示した。
モナコGP主催者がコース変更を否定
モナコGPの舞台となるモンテカルロ市街地コースは、1929年に初めてレースが開催されて以来、基本的な特徴を維持してきた。
狭い公道、低速コーナー、急勾配、そしてガードレールが迫る独特のレイアウトは、ドライバーに極めて高い精度を要求する一方、現代のF1マシンにとっては追い抜きの難しさにつながっている。
こうした状況から、コースの一部を変更してオーバーテイクの機会を増やすべきだという意見も出ている。
しかし、モナコ自動車クラブのミシェル・ボエリ会長は、コースレイアウトを変更する予定はないと明言した。
「多くの人が言っていることとは違って、サーキットのレイアウトを変更することはない」
「この区間を撤去したり移動したりすれば、自動的にサーキットの再検査が必要になり、FIAによる新たな公認を取得しなければならなくなる」
ボエリ会長は、コースの一部を変更するだけでもFIAによる再検査と公認取得が必要になることを理由に挙げ、レイアウト変更を否定した。
ルクレールが提案した新ストレート案も実現せず
コース変更を提案していたドライバーのひとりが、地元モナコ出身のシャルル・ルクレールだ。
ルクレールは以前、モナコGPでの追い抜きを増やすため、ポルティエ付近から新たな長いストレートを設けるアイデアを示していた。
「ミラボーからロウズを通ってポルティエに向かうところで、左に曲がって長いストレートを造るのはどうだろう? トンネルに戻る前に、ひと回りする区間を設けることもできる。ただ、具体的にどう実現するのかは僕にも分からない」
現在のコースでは、ミラボーからロウズ・ヘアピンを経てポルティエへ向かい、そこからトンネルに入る。ルクレールの構想は、この区間に新たなルートを設け、追い抜きの機会を増やそうというものだった。
長い直線ができれば、前を走るマシンに接近して追い抜きを仕掛ける機会が増える可能性がある。
ただし、ルクレール自身も具体的な実現方法について明確な計画を示していたわけではなく、あくまで追い抜きを増やすためのアイデアとして提案していた。
ボエリ会長がコース変更を明確に否定したことで、こうしたレイアウト変更案が近い将来に実現する可能性は低くなった。

「モナコを批判する人々は考え方を改めるべき」
ボエリ会長は、コース変更を否定するだけでなく、モナコGPの存在価値についても強い自信を示した。
F1の商業権を保有するリバティ・メディアとの関係について、ボエリ会長は次のように語っている。
「我々の米国の友人たちは、我々がどれほど迅速かつ柔軟に対応できるかを理解してくれた」
「いまだにモナコを批判している人々は、考え方を改めた方がいい。我々は、このグランプリがF1にとって非常に大きな魅力を持っているという点で合意した」
ボエリ会長は、追い抜きの少なさからモナコGPを批判する声があることを認識しながらも、F1にとって大会が持つ価値は変わらないとの考えを示している。
さらに、コースの細かな部分を巡る議論についても、次のように述べた。
「縁石にコーナーが2つや3つ多すぎるのではないかといったことで、いつまでも悩まされたくはなかった」
こうした発言からは、コースレイアウトに対する批判だけでモナコGPの価値を判断すべきではないという主催者側の姿勢がうかがえる。
リバティ・メディアとの交渉は「公正な競争」
ボエリ会長は、F1との商業的な関係についても率直な見解を示した。
「F1のプロモーターであるリバティ・メディアは、慈善事業としてここにいるわけではない。彼らは利益を上げるためにいる」
「そして我々は、彼らに支払うものをできるだけ少なくし、自分たちでできることを最大限にやろうとしている。これは自由市場におけるシンプルで公正な競争だ」
モナコGPはF1を象徴する伝統的なイベントである一方、開催契約や商業的な条件を巡っては、他のグランプリと同様にF1側との交渉が必要になる。
ボエリ会長の発言は、リバティ・メディアとの間に商業的な利害の違いがあることを認めながらも、双方にとって大会を継続する価値があるという考えを示したものだ。
モナコGPの開催契約は2035年まで延長されており、少なくとも今後約10年間はF1カレンダーに残ることが決まっている。
ピット施設の拡張は検討 コースは維持
一方、主催者はモナコGPの施設について、すべてを現状のまま維持するつもりではない。
特に課題となっているのが、ピットエリアとパドックのスペース不足だ。
モナコGPは市街地の限られた土地を利用して開催されており、常設サーキットと比較するとチームの作業スペースや設備面で大きな制約がある。
ボエリ会長は、港湾地区で計画されている新たな施設整備を利用することで、スターティンググリッド周辺のエリアを再検討できる可能性があると説明した。
「グランプリの将来は2035年まで確保されている。しかし、このプラットフォームとそこに建設される建物によって、グリッド周辺のエリアを見直し、契約をさらに延長することもできるかもしれない」
「すべてはこれから決めていくことだ」
また、現在のピット施設が将来的に限界を迎える可能性についても言及した。
「例えば、ピットレーンをこのまま維持するのが、いずれ難しくなることは秘密でも何でもない。スペースは限られており、ガレージの幅も十分ではない。地上に広げる余地がなければ、上に建てることになる」
これは、コースレイアウトを変更するのではなく、限られた敷地を立体的に活用することで施設面の改善を図る可能性を示したものだ。
ただし、具体的な工事内容や実施時期が正式に決定したわけではない。
追い抜き不足はモナコGP最大の課題
モナコGPでは、予選順位が決勝結果を大きく左右する傾向が長年続いている。
コース幅が狭く、長いストレートも限られているため、前を走るマシンより明らかに速いペースを持っていても、コース上で追い抜くことは容易ではない。
F1はこうした問題への対策として、2025年のモナコGPで決勝中に最低2回のピットストップを義務付ける特別レギュレーションを導入した。
しかし、この措置は戦略面に変化をもたらした一方、コース上での追い抜きそのものを増やす根本的な解決策にはならなかった。
2026年には新しい技術レギュレーションによってF1マシンの車体が小型化されたものの、モナコ特有の追い抜きの難しさが完全に解消されたわけではない。
それでもモナコGPは、ドライバーの技量が試される特別な舞台であり、F1の歴史と伝統を象徴するイベントとして重要な位置を占めている。
2027年はモナコGP初のスプリント開催
コースレイアウトを維持する一方、2027年のF1モナコGPでは大会史上初めてスプリントが開催される。
モナコ自動車クラブは、2027年6月3日から6日に開催される第84回モナコGPでスプリント形式を採用すると正式に発表した。
6月4日(金)にスプリント予選、5日(土)にスプリントと決勝の予選、6日(日)に決勝が行われる予定だ。
しかし、追い抜きが難しいモナコでスプリントを開催することには、ドライバーからも疑問の声が上がっている。
ルイス・ハミルトンはモナコでのスプリント開催について意味がないとの見方を示しており、マックス・フェルスタッペンも追い抜きの難しいコースでスプリントを実施する意義に懐疑的な姿勢を示している。
レッドブル・レーシングのアイザック・ハジャーも、モナコでスプリントを開催するという決定に疑問を呈している。
一方、レーシングブルズのリアム・ローソンは、市街地コースでのスプリントについて、追い抜きの難しさだけを理由に否定する必要はないとの考えを示している。
モナコGPは、追い抜きが難しいコースでスプリントという新たなレース形式を導入することになる。ただし、走行機会が増えることと、コース上での追い抜きが増えることは必ずしも同じではない。
ボエリ会長は、コース変更を明確に否定する一方で、施設の改善やF1との協力関係を通じて大会の将来を確保する姿勢を示した。2027年のスプリント開催を控え、歴史的なレイアウトを維持しながら、現代のF1に求められるレースの魅力をどのように高めていくかが、引き続きモナコGPの課題となる。





