新聞記事は参考になるが参考にとどめる
文章を書く場合、新聞記事はある面ではとても参考になる。
新聞記事は、まず大見出しがあり、それを見るだけで何の記事なのかおおよそわかる。
次に本文より少し大きく太い文字でリード文がある。
大見出しとこのリード文だけで、その記事の内容はわかると言っても過言ではない。
本文は、最も重要なことから書かれる。
その後に、それほど重要ではない説明文などが続く。
最後に、これも付け加えたほうがいいかなと思うようなことが書かれる。
こういう書き方は、新聞社独特の編集方法による。
多くの記者がそれぞれ別のテーマを取材をして記事をまとめ、それを整理部という部署に提出する。
整理部というのは、載せる記事を選択し、レイアウトしていく部署である。
雑誌社の編集部と似たような役割を持つ。
しかし新聞社の場合、毎日出版するためとたくさんの記者がいるため、多くの記事が続々と整理部に提出される。
そのたびに整理部では、「これは一面トップに持ってきてもいいな」「これは後ろの面で小さく取り上げればいい」「これはボツだ」と判断してレイアウトする。
レイアウトしている最中にも続々と新しい記事が入ってくる。
そのたびにレイアウトを変える。
新聞を見てみると、左上に「12版」とか「14版」とか印刷されている。

これは、レイアウトをして版を完成させた回数で、つまり12回も14回もレイアウトを変え、その都度、版を作るのである。
それはともかく、整理部ではできるだけ多くの記事を載せるため、記者が書いた記事をできるだけ短くする。
その際、後ろのほうから削っていく。
だから記者は、削られてもいい内容は後ろのほうに書く。
というより、整理部が削りやすいように記者はそういう書き方をするのである。
新聞記事は、そういう特殊なものなのだ。
しかし雑誌社の記者はそういう書き方をしない。
企画会議や編集会議で決まったテーマごとに担当者が取材に走り、決められた文字数やページ数に収まるように記事をまとめる。
まとめる際は、新聞記事と同じように大見出しを付け、リード文を書き、小見出し付きで本文を書いていくが、本文は新聞記事と違って最初に最も重要なことを書く必要はない。
編集者は、それらの記事を手直しはするが、文字数が少ないから足すとか、多いから削るといったことはあまりしない。
その必要があまりないからだ。
小説やエッセイとなれば、手直しさえあまり行われない。
新人の原稿は派手に赤入れ(手直し)されるが、ベテラン作家の原稿には、明らかなタイプミスなどのほかは基本的に赤は入れない。

それはともかく、小説とかエッセイなどを書く場合には、新聞記事の書き方は参考にならない。
ただ、新聞記者は共同通信社が発行している『記者ハンドブック』に示されている当用漢字や熟語を使って書くので、その点は新聞記事は参考になる。

新聞記事は「小学6年生でも理解できるように」平易に書かれる。
だから難しい漢字(特に人名)には必ずルビをふるし、難解な熟語や慣用句などは使わないようにしている。
表現にも注意を払い、できるだけ読みやすく理解しやいように書く。
そういう点は新聞記事はとても参考になる。
新聞記者になりたい人は大いに参考にするといい。
しかし、新聞記事を書くのでなければ、新聞記事の構成は参考にならない。
いや、参考にしないほうがいい(社説やコラムなどは別)。
起承転結が大切だとよく言われるが、そういう書き方をしないほうが読者に訴えるには有効と判断すれば起承転結に縛られずに書いていい。
そう書いたほうが読んでもらえると判断し、その理由を誰もが納得できるように説明できるのではあればそうしていい。
プロにとってこのこと(どうしてそうしたのか説明できること)はとても重要である。
その際に重要になるのは、大見出しとリード文と小見出しである。
そんなものを付けなくてもいい数行程度の記事は別として、1ページ以上になるものなら、できれば小見出しを付けたほうがいい。

小見出しに重要な単語を入れることで、読み進めたくなる意識を読者に与えることになるからだ。
何ページにもなる長い記事の場合、最初から最後まで全部読んでもらえることは少ない。
世の中には忙しい人が多く、長い記事をすみからすみまで読んでくれる人はまずいないと思ったほうがいい。
私が現役のころは、単行本や文庫本なら目次や見出しだけ読み、新聞や雑誌の記事も大見出しとリード文と小見出しだけ読んで「大事なのはここだな」見当を付けて、そこだけきちんと読んでいた。
だから、長い記事を書く際には、大見出しとリード文と小見出しだけを見ればそれだけで大まかな内容がわかるように工夫したほうがいい。
そのため、大見出しとリード文と小見出しに、記事の要点をズバリと書いたほうがいいケースも多々ある。
小見出しは目次にしてもいい。
見出しにしろ本文にしろ、記事のテーマと想定する読者によるが、硬い語調の単語や言い回しは避ける。
できるだけ柔らかい語調で、しかし読者の関心を得られるような単語と表現で書いたほうがいい。
文章が硬い語調の単語や難しそうな言い回しのものであれば、「まるで論文みたい」と思われて、読者に「読む気」を失わせる。
これらのことに注意して文章を書くと、読者にとって「とっつきやすく」「読みやすく」「理解しやすい」ものになり、結果的に読んでもらえる。
また、要点を箇条書きにして示すのも効果的である。
例えばこうだ。
こんなふうな箇条書きを大見出しやリード文の後などに入れる。
①その体言(名詞)が強調されるので読者の記憶に残りやすい
②文章にリズム感が生まれる(特に対談文や座談会文では効果的になる場合がある)
③詩的、情緒的な印象になる
④読者の想像を膨らますことができる
⑤一文の文字数を減らすことができる
⑥文末表現の連続を回避できる
この箇条書きを読むだけでその記事の概要がわかるようにすれば、読者にとってこれほど嬉しいことはない。
欲をいえば、「見栄えのいい」文章にするともっといい。
ここでいう「見栄え」は、写真やイラストや表やカラーを使って映える記事にするということではない。
フォントをうまく使いこなし(ひとつの記事で数種類のフォントを使うのは避ける)読みやすい大きさの文字にし、字間や行間を調節したり、見出しに斜体をかけたり(文字を斜めにすること)影を付けたりすることなどである。
もちろん、写真やイラストや表やカラーを使えばもっと「見栄えのいい」ものになる。
ただ、たくさんの写真を使ったりカラーを使えば印刷代が格段に高くなるので(金色や銀色といった特殊な色を使うともっと高くなる)、印刷物の記事を書く際にはそのことも頭に入れておきたい。
写真やイラストや表やカラーを使う際の注意点等についてはここでは触れない。
それらについては、自信を持って「こうだ」と言えるレベルに私が達していないと思うからだ。
文章については、「こう書いたほうがいい」と自信を持って言える。
専門学校とかに通って習ったこともなく、誰かに教えられたこともないが、文章の書き方についてはこれまで考えて考えて考え抜いてきて法則等をつかんだからだ。
しかし、レイアウトデザインや写真やカラーの使い方等については必要に迫らることが少なかったせいもあってあまり考えたことがなく、ほぼ直感の我流でやってきたので、自信を持っては言えないのである。
レイアウトの際、写真やイラストや表を効果的に使用すると、より読まれやすくなるのは事実で、カラーページなら色を使えるのでもっと読まれやすくなるのも事実である。
人間の視線が左と上が優位で、そのためレイアウトの際には左か上に最も重要なことや写真を配置したほうがいいとか、何色もの色を使わないほうがいいとか、その程度のことしか言えない。
レイアウトデザインや写真やカラーの使い方等にについては、デザインの専門家に聞くか、専門家の書いた本を読んだり専門家のHPを見るなどして勉強してほしい。
文章については、以下のページで詳しく書いている(『視線は左と上優位〈「視線誘導」〉』では、上に書いた「人間の視線が左と上が優位で、そのためレイアウトの際には左か上に最も重要なことや写真を配置したほうがいい」ということについて書いている)。
