【√と彼らの記憶遊戯】あらすじ/プロローグ「もう一人の主人公」

【プロローグ】もう一人の物語
……ピッ……ピッ……ピ…………。
(何だ……この音……?)
無機質な機械音が聞こえる。重いまぶたを開けると視界に入ったのは真っ白な天井だった。それがやけにまぶしくて、ボクは目をしかめた。
しばらくして、明るさに目が慣れてくるとこの状況に疑問を持った。
ボクは今ベットに寝ていて、視界の隅には見たことのない機械がある。
__それでも疑問を持つとこの体が、これは心電図を測る機械だと、まるで教えてくれるように答えが浮かんでくるから不思議だ。
白いシーツのベットから手をついて起き上がると、真っ先に気になるのは向かって真正面の光景だ。
ターコイズブルーの洒落た色の壁紙、木製のデスクに飾られた一輪差しの花瓶にはオレンジ色のガーベラ、棚に並んだ無数の本とその傍らに飾られているのはバクのぬいぐるみ。
(あれはなんだと思う?誰の趣味?)
この体に問いかけてみたが、答えは浮かんでこない。知らないようだ。
(さて、正面だけ見れば至って普通の部屋。なら脈をきざむこの機械と白い壁やベットが、ここでは異質?)
__否、ここは病室。そう、体が答えたようだった。
(病室?この体は病気なのか……?)
答えてはくれなかった。
(何処ここへ……まさかボクって記憶喪失?……いや)
__持っていた記憶を一時的に、もしくは長期的に失った状態を記憶喪失と呼ぶなら、たぶんこれは違う。
なぜなら、ボク自身が自分の体ではないと否定し、そこには説明しようの無い確信があったからだ。
軋む体を引きづりながら、姿見の前に立つ。それは、先ほど感じた違和感をそのまま証明するものだった。ボクは性別的に男。それなのにこの体は痩せ細っていても、曲線的に女と分かる。
髪の毛は腰まで伸び切った黒髪。目はくりっと大きく、鼻や口は添えるように控えめな童顔だ。おまけに、頭の高さが姿見と同じくらいだから、身長は小柄な方で150cm弱といったところ。
(んで、結局この子は誰なの?)
ボクは何か手掛かりになるものはないかと、日記やアルバムの類を探すことにした。 木製デスクの引き出しを開けてみるが、何も入っていない。続けて隣の本棚を見たが、ぬいぐるみ以外に無難な本しか置いていないようで、手掛かりは得られなかった。
__これじゃ、まるで病室を飾り付けたようだ。
(うーん、困った。)
ボクはそろそろと窓際に向かうとカーテンを開けて、窓の外を覗いた。見上げた空は薄暗く早朝か夕方か。そして目の前には庭が見えた。
(なるほど、ここが一階ってことは分かった。それでも大した収穫じゃないけど。)
(__やはり部屋の外に出て見なければ。)
ボクは時折ふらつく体を支えるように、家具に持たれながらゆっくりとドアに向かって進んだ______。
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それから登校日の朝、制服を着たボクは姿見の前に立つ。
「しばらく……いや、いつまでか分からないけどこの体借りさせてもらうね。」
返事なんて返って来ないから、代わりに返事をした。
「よし、許可はとったから!自作自演だとか後で怒らないでよね。」
我ながら滑稽だ。こうしてボクの借り物生活は幕を開けたのだった____。
プロローグ_完
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【目次リンク集・更新予定はこちら↓】
*あらすじ/プロローグ(現在のページ)
(*第一章_暖野廉李:能力編_第1〜5話完結済:約45000文字)
• 1話(1/5)新学期
• (2/5)クラス替え
• (3/5)簡潔なる権威
• (4/5)担任の篠崎先生
• (5/5)ある清掃員
• 2話(1/4)校長室と兄さん
• (2/4)それは突然に
• (3/4)再配役
・ (4/4)質問は3つまで
• 3話(1/4)ある少女について
• (2/4)魂の脚本
• (3/4)ボクの回想①
• (4/4)ボクの回想②
• 4話(1/4)第2人格
• (2/4)花見と追憶
• (3/4)蓋を開けた過去
• (4/4)誰が為の能力
• 5話(1/2)人格交代とクラスメート
• (2/2)主人公になる為の5日間
番外編:迷宮を追う
(順次更新予定↓)
*第二章_煌月シュファ:双子編
*第三章_八坂多留:腹違い編
*第四章_神無楓:真相編
*エピローグ
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